久保田薫コラム

アメリカンフットボールの起源と歴史

第11話
アメリカン フットボールの起源と歴史
第1章

フットボールからどのようにしてアメリカのNo.1スポーツのアメフトになったのか

新年の1月1日、抜けるような青空の下、ロスアンゼルス郊外のパサディナにあるローズボウル スタジアムには、早朝から花や草花の種を使って何ヶ月もかけて作られた華やかな山車(だし)が街の通りをマーチングバンドの奏でる軽やかなリズムに乗って誇らしげに行進するローズ パレードを観た後、そのままスタジアムに詰めかける11万人にも及ぶ大観衆が午後から行われるカレッジ フットボールに熱狂します。

1886年のローズパレードが行われたコロラド通り


このローズボウルは1902年から開催されているが、年末から新年にかけて全米各地でこのようなカレッジのフットボール ゲームが開催され各地で8万〜10万人の観衆を集め、それぞれの試合結果によりメディアなどの投票で最終的なランキングが決められ、その年のチャンピオンも決定され、これらのゲームに出場したチームには1チームに5〜10数億円のギャランティが支払われ大学運営の資金にもなっている。

また、アメリカのプロ スポーツの中でも最高峰に位置づけられるプロ フットボール組織のNFL(ナショナル フットボール リーグ)の頂点、即ちプロの王座をかけて闘われるスーパーボウルは2月の第1または第2日曜日に開催されるが、この試合へのアメリカ人の関心度は言葉では表現できないほど凄いものがあります。 全世界にテレビ中継されているが、そのCM料は世の中の不景気など何処吹く風で、僅か30秒のコマーシャルで300万ドル(2億4000万円)をくだることはなく、そのスポンサー枠は取り合いになるほど競争率も激しくCM料も上昇することはあっても下がることはないと云われるほどであり、視聴率も40〜46%はあり占有率に至っては65%にもなり殆どのアメリカ人はスーパーボウルを観ていることになります。

世界中にある米軍基地の軍関係者もこの日ばかりは任務を休止しテレビに見入っている。
プロ野球、プロ バスケットボール、プロ ホッケーなどある中でアメリカン フットボールが断トツの人気を誇りアメリカ社会に於いてはスポーツの領域を超え文化のひとつと云っても過言ではありません。 アメリカでのフットボール人気が余りにも凄いので、その理由を知りたく私も若い頃渡米し多くの関係者や指導者に会い参考資料などもいただきました。

その時に感じた事はアメリカ人の懐の深さでした。もし私のような一個人が日本プロ野球のコミッショナーに歴史についてお聞きしたいということで面会の依頼をしたら100%に近い確率で会っていただけないと思いますし、日本では誰々の紹介とかいうのがないと会うことも難しいぐらいで、それが日本の社会ではごく当たり前の事でしょう。当時まだ大学を出て間もない頃で、ただフットボールに興味がある若者というだけで資格など何もありません。そんな時に自分勝手な好奇心だけで時のNFLのコミッショナー ピ−ト ロゼール氏に面会依頼の手紙を出すと、いとも簡単に会っても良いという返事をいただき、2時間程もニューヨークの5番街にあるオフィスで色々教えていただき写真や資料もいただきました。その上帰国して1ヶ月も経たないうちに自宅に段ボール箱5ケースほどの当時のNFL所属の全チームのペナントや本、写真、資料等を送っていただきました。後にTBSでスーパーボウルの解説の話をいただきスーパーボウルの前夜祭のパーティに出席する度にいつも声をかけていただくほどでした。実はピート ロゼール氏と当時パンアメリカン航空の極東代表だったデビッド ジョーンズ氏(大相撲で昔 小太りの外国人が紋付袴を着て土俵にあがり優勝力士にカタコトの甲高い声で「ヒ・ヨー・ショー・ジョー」と言ってドッと沸く観衆を見ながら表彰状を授与していた人)の両氏は前職の広告代理店で机を並べて働いた仲で親友であったこともわかりました。ロゼール氏はその経験を買われロスアンゼルス ラムズの広報員として採用され、みるみるうちに手腕を発揮し弱冠33才でNFLのコミッショナーに就任するほどの辣腕であったが、会うといつも気軽に「デイビィによろしくね」という優しさを忘れなかった。

随分と横道にそれましたが、当時の私はアメリカン フットボールの事で頭がいっぱいで明けても暮れてもアメフトのことばかりでした。 そんなある時に何故フットボールというのだろうかと疑問を持ち調べてみようと思ったのが今回のフットボールの起源に触れるきっかけにもなりました。 一体、サッカー、ラグビー、アメリカン、オーストラリアン、ゲーリックの各フットボール(FOOTBALL)は何故フットボールなのでしょうか。 中には古代球技の「ハルパストンまたはハルパスタン」はフットボールの起源とも云われながら手を使って投げるハンドボールの起源でもあると云われているものもある。 多分足で蹴る事から始まったから「フットボール」というのではないのか、というのが殆どの人の答えではと推察されますが果たしてそうなのでしょうか。

「FOOT」とは正式には踝(くるぶし)から下の部分を云いますが、蹴る動作で最も重要な部分である足の甲は横の部分も含めて何故か「INFOOT」と云い、足のつま先は「TOE」、かかとは「HEEL」、足の裏は「SOLE」と云います。

「蹴球」と辞書を引くと「サッカー、フットボールの事」とありますが、逆に「FOOT」には蹴るという意味はどこにもありません。 蹴球即ちボールを蹴るという事は「Kicking Ball」ということが本当の意味でしょう。 では、空気など注入することを知らなかった時代の人たちはボールをどのようにして蹴っていたのでしょうか想像してみて下さい、袋状の何かに砂や土を入れて足で蹴る場合、足の甲で蹴ったりしたら重くて飛ばすこともできないし、足を痛める可能性のほうが大きいと予測されます。蹴るという行為ではなく転がしていたのではないでしょうか。

その後、動物の膀胱に空気を入れたり、布や羽根などの軽いものを詰めたりするようになったのでしょう。(1A) 実際、中国で行われていた蹴鞠(しゅうきく・けまり)での鞠はまさしく鹿の皮に羽根を詰めて使用されていました。 この蹴鞠を英語的に云うと「FOOTBALL」ではなく「KICKING BALL」なのです。 いずれにせよ、屁理屈には違いないのですが、「フットボール」という言葉自体はボール状のものを蹴ったり、手で転がしたり動いてるボールを押さえたりしていた競技を総括してフットボールという名前で呼んでいたということで、その後それらから発展していった球技に全て「OOOフットボール」と名付けられたもので、足で蹴るからフットボールということではないのではないでしょうか。

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