久保田薫コラム

久保田 薫 アメフト マンダラ

第33話
久保田 薫 アメフト マンダラ
其の2 ビル ウォルシュいよいよNFLヘッドコーチに(3)

私とサム ワイチとのことは後に詳しく書きますが、彼が選手生活を終えてから仕事付き合いで再会することになり以後何度も会っていた。
その後突然ウォルシュから49ersのQBコーチとしてオファーがありフットボール界に復帰することになりこの試合ではサムがスポッターを務め私もその横に座らせてもらいプレーコールやウォルシュからの指示などをヘッドフォンを通じて聞く機会が与えられた。
当然、最初のゴール前のギャンブルの失敗の後プレーのチョイスについて意見を聞かれたので自分の思っていることを正直に話した。
試合は49ersが出足でつまずいたものの予想通り楽勝ペースで後半に入った。

そして、再びゴール前2ヤードで1stダウンを獲得したが3rdダウンで開始早々のゴール前同様ゴール前数センチまで前進していた。
すると突然サムが私にゴールラインオフェンスのプレーリストを見せ、失敗しても相手にボールを奪われなかったら最後のダウンが残っているからその時はFGを蹴るから遠慮せず良いと思うプレーを自分でチョイスしてみろと云われ、余りにも突然のことだったが遠慮したりしている時間などないのとこんなチャンスは2度とないだろうと咄嗟に思い、左のオフタックルへのトラッププレーをコールしたら大きなホールが出来悠々とTDすることができた。
まさかNFLのチームでプレ−をコールできるとは思わなかったがごく普通にできたのは自分自身でも驚いた。

そして、このシーズン後のプレーオフも勝ち進みスーパーボウル初出場のみならずスーパーボウルもあの多くの確執と因縁のあったビル タイガー ジョンソン率いるシンシナティ ベンガルズと対戦することになりメディアも大変な盛り上がりようだったがウォルシュは冷静でいつも平然としておりプレーも淡々とコールしていた。
この試合はTBSで衛星放送され私も解説させていただいていたのですが、ハーフタイムに何とウォルシュとワイチの両コーチが「ブースのドアにJAPANと書いてあったのでノックした」と我々の放送ブースに挨拶に来てくれたのである、前半は一応49ersがスコアー以上に有利に試合を進め20−0とベンガルズを0封しているもののそんなに大差がついているわけでもなく、後半逆転される可能性も充分考えられるゲーム展開でしかも初出場なのに、その余裕には本当に感心させられた。
もちろん、ウォルシュの思い通りのゲームプランが見事に成功し後半追い上げられたものの自分の人生をも変えたベンガルズに26−21で勝利し初制覇を成し遂げ、その後も第19、第23回スーパーボウルを制覇し49ersのヘッドコーチを有終の美で終えた。(写真・8)

さて、このスーパーボウル出場に於いてもと云うよりウォルシュがヘッドコーチに就任して以来49ersが強豪チームとして一目おかれるようになるがその過程が不思議な縁(えにし)としかいいようのないようなことがいくつもあった。

49ersでのウォルシュのコーチ生活は誰が見ても順風満帆の歩みに見えただろうがその過程はまるで小説以上のドラマを観ているようでもあった。

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